お金さんとの不思議な出会い:第2話

お金さんとの不思議な出会い:第2話

見えない距離が教える本当のつながり

少し遅めの夕飯を取りながら、なんとなくテレビの前に座っていた。画面には、お笑い芸人たちがにぎやかに騒ぐバラエティ番組が映っている。視線は向けているものの、内容が頭に入ってくるわけでもなく、ただテレビの音が部屋の背景になっていた。

夕飯は最近おなじみのコンビニ弁当。特に感動もなく、淡々と食べ進める。食べ終わるころには、毎回胸の奥に小さなむなしさが残るだけだった。

スマホを手に取り、無意識に画面を確認する。彼女からの着信は入っていない。いつも会社を出てすぐに終わったよと疲れた声で連絡が来るのが日課だ。でも今日はまだきていない。

そんなことを考えた矢先、スマホが突然震えた。画面を見ると、彼女からの着信通知が表示される。

少し重い気持ちで応答ボタンを押す。

「もしもし」

電話越しに聞こえる、いつも聞く声。付き合い始めて5年が経つ彼女だ。最近は、仕事の愚痴がほとんどを占める会話ばかりになってしまった。

「また上司がさ…本当にわかってないんだよね」

彼女は捲し立てて話し始める。受話器越しに彼女の声を聞きながら、ふと遠くを見つめてしまう。彼女の言葉は聞こえているのに、その言葉がどこか遠くに感じられる。未来を一緒に語り合っていた頃が懐かしい。一緒に朝まで話したことも良くあった。一緒にいなくてもいつもお互いをサポートしあっている感覚が常にあった気がする。でも今では、お互い愚痴を言い合うだけの関係に思えてしまう。前と一緒にいるのは変わらないのに前よりも手の届かないような離れている感じ。いつからこうなってしまったんだろう。

「そうだね、大変だよね」

受け流すように相づちを打ちながら、彼女の話を聞き終える。電話を切ったあと、深くため息をついた。胸の奥に広がるのは、彼女とのつながりがさらに薄れているような不安感だった。

ふとスマホの画面を見ると、先ほど検索していた画面にアプリの広告が出ていた。

「DM」メッセージアプリ – 本当の気持ちを知りたいあなたへ

どこにでもありそうな広告。でも、なぜかその一文が心に引っかかった。「本当の気持ち」という言葉が、今日の自分には妙に響いたのかもしれない。何かが自分の中で反応した。

「DMか…安易な名前だな」

でもなぜか名前も妙に頭に残った。何か特別なもののように思えてしまう自分がいた。

気づけば指が動いていて、アプリをダウンロードしていた。進捗バーがゆっくりと進んでいくのをぼんやり眺める。その間にも、満腹感と軽い疲労感が重なり、眠気が押し寄せてきた。

アプリのダウンロードが完了した頃には、いつの間にか目を閉じてしまっていた。

第3話「信頼がもたらす豊かさの循環」につづく