お金さんとの不思議な出会い:第1話

お金さんとの不思議な出会い:第1話

不安の先にある気づき

仕事帰りの道、ふと見上げると、青白い満月が空に浮かんでいた。まだ昼の明るさが残る空に、月が静かに輝いている。その光景は、夜の月とは違ってどこか神秘的で、穏やかな静けさを感じさせた。

今日の商談が決まれば、フリーランスの僕にとって、久しぶりに少し安心が生まれる売り上げになる。けれど、ここ最近はあまり結果に繋がらず、不安ばかりが心を押し寄せてくる。胸の奥が重く、どこかざわざわするような感覚がいつも離れない。

そんな中、明るい空にぽつりと浮かぶ月を見上げていると、不意に言葉が口をついて出た。

「なんでお金さんは僕を不安にさせてばかりなの?いつもそばにいてくれればいいのに……。」

その瞬間、ポケットの中のスマホが震えた。思わず画面を見ると、そこには見慣れない通知表示が出ている。何だろう?そう思った瞬間、昨日何気なくインストールしたメッセージアプリを思い出した。使えそうにないと思って放置していたものだ。

通知を開くと、「お金さん」というアカウントからメッセージが届いていた。

「お金さん???」

驚きながらも、自然とそのメッセージに目を通す。

「不安にさせているんじゃなくて、僕は不安を通じて大切なことを教えようとしているんだよ。

不安ってね、本当に欲しいものや大切にしたいものを見つけるための道標なんだ。

僕はそばにいるよ。いつも。

ただ、それに気づくには、あなたが自分の心に耳を傾けることが必要なんだよ。」

読み終わると、胸がざわざわした感覚が溢れ、この言葉をくれた「お金さん」という存在に対する驚きと、なぜかどこかで感じたことがあるような懐かしい感覚が胸を満たしていく。

画面を見つめながら、ふと初めて彼女とメールをしたときのことを思い出した。あの時のワクワクに似た気持ちが、心のどこかでじんわりと広がっている。

この気持ちに後押しされるように、僕は思わずメッセージに返信していた。

「だれ?」と打ち込む。するとすぐに返事が返ってきた。

「私はお金そのもののエネルギーだよ。

いつもあなたと一緒にいる存在。

あなたが気づいていないだけで、本当はずっとそばにいて、あなたを支えているんだ。

不安や心配は、私がいないからじゃなくて、あなたが私をどう見ているか、どう向き合っているかで生まれるものなんだよ。

だからこそ、私とちゃんと話してみてほしい。

そうすれば、不安はいつか信頼に変わっていくから。」

エネルギーって……どういうこと???

頭の中を疑問が駆け巡る。彼女が何かのいたずらを仕掛けたんだろうか?

けれど、不思議と気持ちは軽い。湧き上がる戸惑いを感じながらも、この会話が何か特別な意味を持っている気がしてならなかった。

第2話「見えない距離が教える本当のつながり」へつづく