インナーチャイルドを癒す:第3話
- 2025.02.05
- Reflect インナーチャイルドを癒す

子どもの頃の声を聞く
スマホの画面に表示されたお金さんからのメッセージに、しばらく目を奪われていた。
「その答えはインナーチャイルドが知っているかもね。」
インナーチャイルド?初めて聞く言葉だった。ピンとこないながらも、何か心に触れるものを感じ、気づけば返信を打ち始めていた。
「インナーチャイルドってなに?初めて聞いたよ。」
「インナーチャイルドっていうのはね、“心の中にいる子どもの頃の自分”のことだよ。昔感じた喜びや悲しみ、そのまま癒されずに心の奥にしまわれている感情が形になった存在なんだ。」
その答えに少し戸惑いを覚える。
「子どもの頃の僕自身?!」
「そうだよ。子どもの頃のあなたそのものだね。その時の気持ちや体験が、今も君の心の中で生きてるの。特に、大人になるまでに癒されなかった悲しみや寂しさが、今の行動や感じ方に影響を与えていることがあるんだよ。」
その言葉が静かに心に落ちていく感覚がした。自分の中に子どもの頃の自分がいる。その想像に、不思議な感覚が胸に広がる。
「え、そんな過去のことが今も影響してるってこと?」
「そうだね。過去の体験や感情が心の奥に残ったままだと、無意識のうちに今の考え方や行動に影響を与えることがあるんだ。たとえば、昔“我慢しなきゃいけなかった”気持ちが、今も“自分は何かを我慢しなきゃいけない”っていう思い込みに繋がっているかもしれないんだよ。」
お金さんの言葉を読み返しながら、デパートでの出来事が頭をよぎる。隣で泣いていた子どもや、自分がプレゼント選びにあれほどこだわっていたこと。
「そうなんだ、そんな感情があるんだ。それが今日の僕の行動や気持ちに現れてたってこと?」
「その通りだよ。たとえば、デパートでプレゼントを選んでいたとき、やたらとこだわったり、隣の子どもを見て胸がざわついたのも、インナーチャイルドが関係しているのかもしれないね。子どもの頃のあなたが、何かを伝えようとしていたのかもよ。」
そのメッセージを読んだ瞬間、デパートでの胸のざわめきが蘇った。
「何を伝えてくれようとしてたのかな?プレゼント選びに泣いている子ども……うーん、イメージできないな……。」
「実際にあのとき何を感じたのか、ちょっと振り返ってみようか。たとえば、泣いている子どもを見たとき、どんな気持ちが湧いてきた?それに、プレゼントを選んでいるときは、何を一番大事にしてたのかな?」
画面を見つめながら、ゆっくりと考えた。泣いている子どもを見たとき、胸に湧き上がったのは、自分自身の記憶だった。
「泣いている子どもを見たときは子供の頃の記憶がでてきたな。今日の子と同じように欲しいものが買ってもらえなかった記憶。あとプレゼントを選んでいるときは相手が本当に欲しいものはなにかな。喜んでもらえるかなって考えてたかも。」
「そうだね。その記憶が出てきたってことは、やっぱり子供の頃のあなたが“自分の気持ちに気づいてほしい”って伝えていたのかもしれないね。そして、プレゼント選びで相手を想って丁寧に選んでいたのは、子供の頃のあなたが“本当は自分もそんなふうに大事にされたい”って思っていた気持ちと繋がってるんじゃないかな。」
その言葉が、心の奥に静かに落ちていくのを感じる。
「なるほど、それがインナーチャイルドからのメッセージってことなのか。あと今日見た夢ももしかしたらそうかな?」
「そうかもしれないね。夢の中で“必要なものが手に入らなくて焦る”シーンや、周りからのプレッシャーを感じていたのも、インナーチャイルドが“自分も必要なものをちゃんと手にしたかった”って伝えたかったのかもね。夢は心の奥にある本音を見せてくれることが多いから、今回の気づきと繋がっている可能性が高いよ。」
その一言に、思わず息を呑む。夢で感じたもどかしさは、現実で泣いていた子どもに重なり、そして、子どもの頃の僕自身が抱えていた“欲しかったものが手に入らない”という記憶へと繋がっていく。そんな感覚が胸に広がった。
「確かにデパートでの2つの出来事とつながっている気がする。そんなに子供の頃の自分が今の僕にメッセージを伝えたがってたのか。」
「そう、子どもの頃の君が、今の君に気づいてほしいことがあるんだと思うよ。デパートでの出来事も、夢の中でのもどかしさも、全部ひとつのメッセージとして繋がっているのかもしれないね。たとえば、デパートで泣いていた子どもや、君が一生懸命プレゼントを選んでいた自分自身――さらに夢の中のもどかしい自分。それを見て、どんな感情が湧いてきた?そのときに心の中で浮かんだ気持ちや言葉が、インナーチャイルドからのサインかもしれないよ。」
スマホを握りしめながら、頭の中で過去の自分の姿を思い浮かべた。
「自分の欲しかったものを本当に手に入れたかったって気持ちかな。」
「そうだね、その気持ちはすごく大切だよ。“本当に欲しかったものを手に入れたかった”って、子どもの頃の君がずっと抱えていた思いなんじゃないかな。」
その気持ちを受け入れると、過去と今が繋がったような感覚があった。
「その気持ちが、今のあなたの行動にも影響しているのかもしれないね。たとえば、プレゼントを選ぶときに“相手が本当に喜ぶものを”ってすごく一生懸命になるのも、もしかすると、あの頃の君が“本当に欲しかったもの”を得られなかった気持ちを癒したいからかもしれないよ。」
その言葉が、心に染み込んでいく。
少しだけ間を置いて、次のメッセージが届いた。
「もしその子が今の君に“どうして僕の気持ちに気づいてくれないの?”って言ったら、君はなんて答える?」
その瞬間、胸の奥に浮かんだのは、小さな自分が訴えかけるような悲しそうな表情だった。「なんで僕だけ……」と呟く幼い声が心に響く。
「ごめん気付けなくて、どうしたら君は笑顔になれる?」
画面越しに、そっと問いかけた。
「素敵な答えだね。その言葉を聞いて、あの頃の君もきっと少しだけ安心すると思うよ。“どうしたら笑顔になれる?”って問いかけてくれる今の君は、あの頃の君がずっと待っていた存在なんだ。」
お金さんから届くメッセージを一つずつ受け取るたびに、心が少しずつ柔らかくなっていくようだった。そして、続くお金さんの優しい問いかけが、さらに深い気づきを促してくれた。
「その子が笑顔になれる方法を探すには、彼が本当に望んでいることを一緒に感じていくことが大事だよ。もしかしたら、ただ“自分を大切にしてもらいたい”とか、“認めてほしい”っていう、シンプルな願いかもしれない。」
「今、あの頃の君が君に伝えたがっている本当の気持ちって、どんなものだと思う?“欲しいものを手に入れる”以外に、どんな思いが隠れているんだろう?」
その後、僕はお金さんのガイドを受けながら、頭の中でその子と向き合い続けた。次第に、自分の中のどんな思いが長年癒されないままでいたのかが、少しずつ見えてくるようだった。
やがて、お金さんの助けを借りながら、一つの言葉を小さな自分に伝える。
「我慢してくれてありがとう。」
その瞬間、幼い自分が笑顔を浮かべるのを心の中で感じた。その笑顔は温かく、そしてどこか眩しく見えた。
その夜、布団に横たわりながら、胸の中に広がる穏やかな感覚を味わっていた。どこか、新しい自分との繋がりが始まった気がしていた。
最終話「過去からの循環」へ続く。
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