信頼の循環に気づく:第4話

信頼の循環に気づく:第4話

信頼が生む新しい流れ

モニターを見つめる。自分でも信じられないくらい物事がスムーズに進んでいる。

担当者さんからのメールには、的を得た指示が的確に並び、チーム内でも高い精度の成果物が次々と上がってきた。

「こんなにうまくいくなんて……。」

プロジェクトが追い風を受けたボートのように、スムーズに進んでいった。あんなにも停滞していた状況が嘘のようだった。数日前の自分が見たら、きっと驚くに違いない。

気がつけば納品の日が訪れ、プロジェクトは無事に終了した。スケジュール通りに進行し、品質にも問題はなかった。

その日の午後、担当者さんからの感謝のメールが届いた。

「今回は本当に助かりました。無事スケジュール通り納品することができました。ありがとうございました!」

以前とは全く違う雰囲気のメールだった。そこには感謝の気持ちが溢れ、どこか温かさすら感じられる。僕は自然と笑みを浮かべながら画面を閉じた。

あの夜、自分を信頼することの大切さに気づいて以来、少しずつ肩の力を抜き、相手を信じてみようと意識していた。その結果なのだろうか。言葉や態度が自然と変わり、それが周囲にも伝わったのかもしれない。けれど、それだけでは説明がつかないような、大きな力が働いている感覚があった。

手にしたものは、プロジェクトの成功だけではなかった。

数日後、銀行口座を確認すると、これまで見たことのない金額が振り込まれていた。独立して以来、最高額の売上だった。

その金額をチーム一人ひとりの口座へと振り分けながら、不思議な感覚が胸に広がる。

「これが、お金の循環ってやつなのかもしれない。」

今まではただお金が増えた、お金が減ったという感覚しかなかった。しかし今は違う。

お金さんが以前言っていたエネルギーの循環。それが今回、目に見える形で実感できた気がした。さらにそこには、みんなの頑張りと感謝のエネルギーが乗っているように思える。

これが、ただの数字以上の意味を持つお金の流れなのだと、胸の奥で静かに確信する瞬間だった。

帰り道、車を運転しているとスマホが通知音を鳴らした。少し離れた場所に車を停め、メールを確認すると、それは担当者さんからだった。

「先日納品したお客様から再発注をいただけました。つきましては、またご一緒に案件を進められたらと思いますので、お打ち合わせよろしくお願いいたします!」

また新しい案件。担当者さんとの信頼が、次の仕事を呼び込んでくれたのだ。

さらにもう一通、メールの通知が届く。今度はチームのメンバーからだった。

「別で進めている案件のスケジュールが少し厳しくて……。前回のプロジェクトの話をクライアントにしたら、ぜひお手伝いをお願いしたいと言われました。一度お話を聞いていただけないですか?」

信頼が広がっていくのを感じた。チーム内だけでなく、クライアントやその先の人々にまで循環が広がり始めている。こんな感覚は初めてだった。

以前の僕なら、メールを確認したその場で返信をしていただろう。完璧にしなきゃ、と焦るように。けれど、今は立ち止まる余裕がある。

「帰ってからでいいか。」

深呼吸をしてそう思えたのは、少しずつ自分を許せるようになったからだろう。肩の力を抜いた瞬間、ふと心が軽くなった気がした。

車窓から見上げると、夜空にはひときわ明るい月が浮かんでいる。その月がまるで見透かすようにこちらを静かに見つめているように思えた。

月を見つめながら、お金さんや彼女のことが頭に浮かび、胸の奥がじんわりと温かくなる。

その温かさは、自分自身にも向けられ、自然と感謝の言葉が口をついた。

「ありがとう。」

信頼の循環が、新たな流れを生み出し始めている。そして、その流れの中で、胸の奥に湧き上がる感謝の思いが、静かに広がっていくのを感じた。

その感覚を抱えながら、僕はこの流れがどこへ向かうのかを、まだ知らない。けれど、それが次の何か大きな気づきへと続いていく予感だけが、心に確かに残っていた。

第4章へつづく。